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Yokohama Maritime Forum 2019 2日目ダイジェスト

カテゴリ:お知らせ

YMF2019 フォーラム2日目 ダイジェスト

2019年10月24日(木) 会場:パシフィコ横浜アネックスホール

【セッション4】 港湾の視点から
モデレーター:国際港湾協会(IAPH)政策戦略担当常務理事 パトリック・ウァンフォーヘン
スピーカー:
・横浜川崎国際港湾株式会社(YKIP)代表取締役社長 諸岡正道
・バンクーバー港港湾局副社長 ダンカン・ウィルソン
・アムステルダム港港湾局政策顧問兼国際港湾協会(IAPH)CMF部会議長 ピーター・アルケマ
・ニューヨーク・ニュージャージー港湾公社港湾局長 サム・ルーダ

 セッション4では、港湾の視点から持続可能性を追求する方策について模索した。ウァンフォーヘン政策戦略担当常務理事は、「(持続可能な港湾に向けて)環境対策を進めていくためには投資が必要だ」と指摘する一方で、ルーダ港湾局長は、「誰が資金を負担し、どのぐらい出すのかという問題がある」と提起。ウァンフォーヘン政策戦略担当常務理事は、「例えばトラック業界ではトラックにこれ以上お金をかけたくないという希望がある。他業界との連携や協力は必要不可欠だが、協力を求めすぎると跳ね返りがある可能性がある。常に交渉していかなければならない」と説明し、環境対応にインセンティブを与えていく必要性を強調した。会場からは反対に、「汚染を生むような船舶など環境対応に逆行する動きに対する罰則は必要か」といった質問が出たが、「アメとムチのアプローチとしてインセンティブと規制を組み合わせて提供することが効果的だと思う」といった意見が上がった。また全ての船舶が環境対応型になれば、将来的にインセンティブを終わらせていくことも議論していかなければならないとした。
 各港間の連携については、「世界には複数の類似した環境保護プログラムがあるが、全体を包括するプラットフォームは必要か」といった質問が出た。これに対し、「効率的な枠組みにしていくためには、プログラムが点在するのではなく、まとめていくべきだ」といった複数の意見が上がったほか、諸岡社長は、「港湾はローカルな存在であるため、国際海事機関(IMO)のような国際的な組織がない。一方で、IAPHのような港湾のネットワーキング団体はあり、こうした場で何か考えていく必要がある。また今回のYMFのような海運事業者、港湾当局やターミナルオペレーターなどが一堂に会して意見交換できる場も必要だ」と指摘した。
 LNGバンカリング拠点の形成についても議論のテーマに上がった。アルケマ部会議長は、「船舶の多様化が進む中、LNG燃料は中間的もしくは長きに渡って使われる主流な燃料となりつつある」と説明。他方で、「LNG燃料などの新エネルギーは安全管理が高いレベルで求められるため、安全性を確保する枠組みも用意していかなければならない」と指摘し、IAPHが作成した実務的な安全管理ツールを紹介した。また長期的には、「LNG燃料での経験を踏まえつつ、その先の新燃料にも対応していく必要がある」と語った。
 諸岡社長は、LNGバンカリング拠点の構築に向けて、「一つの港湾では長距離輸送に対応できないため、(港湾間の)ネットワークの構築が重要だ」と強調。ウィルソン副社長もバンクーバー港で22年初頭にシップ・ツー・シップでのLNGバンカリングの実現を目指す方針を示し、「関係者間の協力が鍵となる」と述べた。

【セッション5】海洋環境とそのガバナンス
モデレーター:世界海洋評議会(WOC)会長 ポール・ホーサス氏
スピーカー:
・国際タンカー船主協会(INTERTANKO) 常務理事 キャサリーナ・スタンゼル氏
・早稲田大学法学学術院教授 河野真理子氏
・日本郵船常務経営委員 小山智之氏
・九州大学教授 磯辺篤彦氏
・ソシエテ・ジェネラル・コーポレート投資銀行グローバル統括 ポール・テイラー氏

 セッション5は「海洋環境とそのガバナンス」をテーマに各スピーカーが講演した。早稲田大学の河野氏は海洋の保護・保全に関する記述のある国連海洋法条約(UNCLOS)に言及。「海洋をいかに使い、どう関わっていくのかを考える上で同条約は重要」との見解を示した。国連海洋法条約は1970年代からその必要性が指摘され国際的に検討が進んできた。河野氏は「同条約は既存のルール・法律を尊重する性格があり、同条約の下、各国は自国の法律に則って、海洋環境保護の取り組みを推進していくべき」と推奨した。
 一方で、漁業関連の資源の保護と、一般的な(同条約で謳われている様な)海洋環境の保護は切り離して考える必要があるとも説いた。
また、海洋環境保護について子供から成人まで市民全員が改めて学ぶ必要があるとした。それを受け、WOCのホーサス氏が「民間セクターの役割も重要」とし、日本郵船小山氏の講演に移った。
 小山氏は自身の船長としての初の航海で、狭隘な海域で他船と接触の危機に直面したことを振り返り、「ぎりぎりのところで回避できたが、接触していたら大規模な事故になっていた。環境被害も甚大なものとなったはず。この経験から決して自信過剰にならず、全乗組員の協力が必要との思いを改めて持った」と語った。また、海運業界でこれまでに起きた油濁などの大規模な事故を紹介。その上で、事故を教訓に海運業界が努力を重ねて、安全対策を強化し事故件数の減少につなげてきたことを報告した。
 具体的にはタンカーのダブルハル(二重船殻構造)への移行につながった1989年の「エクソン・バルディーズ号」の事故などを挙げた。ダブルハル化によって、従前のシングルハルと比較し、安全性だけでなく、60%以上の環境負荷軽減効果もあるとした。
 九州大学の磯辺氏は海洋上に浮遊し、海洋生物へ悪影響のあるマイクロプラスチック問題で講演。国内では北海道大学など複数の機関が北大西洋上でマイクロプラスチックのモニタリングを行っていることを紹介した。
また、日本を含む東アジア圏の洋上は世界的にもマイクロプラスチックが多いことを図示し、「われわれは海洋汚染のホットスポットにいる」と警鐘を鳴らした。
 一方で、マイクロプラスチックの研究はここ10年で本格化したばかりであることも説明。「全世界のすべてのマイクロプラスチックの循環状況を把握する必要がある」と今後の課題を指摘した。
 次いで、ソシエテ・ジェネラル・コーポレート投資銀行のテイラー氏が同行も加盟する海運業界へのファイナンスに関する気候変動関連の原則「ポセイドン原則」について講演した。同原則では、同行も含む複数の金融機関が共にIMO(国際海事機関)のGHG(温室効果ガス)排出削減目標に対する海運企業の取り組みを評価する。テイラー氏は「同原則に基づき、海運企業の与信を決定する上で、環境問題への対応を確認していく」と語った。
 また、同原則に基づき、「(環境対策を促進し)顧客のパートナーとなる」「LNG(液化天然ガス)、メタン、水素といった新燃料への投資を後押しする」と述べた。

【セッション6】船舶燃料としてのLNG及びそのバンカリングについて
モデレーター:シーエルエヌジー(SEA\LNG)協会会長 ピーター・ケラー
スピーカー:
・カーニバル・コーポレーション海務担当上級副社長 トム・ストラング
・商船三井代表取締役副社長執行役員 橋本 剛
・シンガポール海事港湾庁(MPA)最高責任者補佐 M・サガール船長
・ジャパンマリンユナイテッド取締役専務執行役員 佐々木高幸
・日本郵船欧州統轄会社最高経営責任者 スヴェイン・スタイムラー
・ワルチラ(Wartsila)アメリカ海務担当副社長 ジョン・F・ハトリー

 セッション6では船舶燃料としてのLNGの有望性や、LNGバンカリング体制の整備に関して討論した。ケラー会長は、「従来の化石燃料からゼロカーボンに移行するまでの橋渡しが必要となる」と指摘し、「LNG燃料は大気汚染改善の観点から有望だ」と強調した。ハトリー副社長もSEA\LNGの研究結果を踏まえ、「LNG燃料の活用は投資収益の面からも環境への影響からも、今すぐにでも採用していくべきだ」と語った。
 スタイムラーCEOは、日本郵船とワレニウス・ラインズの合弁会社ユナイテッド・ヨーロピアン・カーキャリアーズ(UECC)が導入した世界初のLNG燃料自動車運搬船や、次世代船としてバッテリー搭載型のLNG燃料自動車運搬船を紹介。「LNGは既に証明された競争力のある船舶燃料だ。今後、LNGを燃料とした船が増えていくだろう」と期待を示した。サガール船長は、「シンガポール港は世界でも有数のバンカリングハブだ」と説明し、「環境規制の強化が進むとクリーンな代替燃料を模索する必要があるが、中でもLNG燃料は最も成熟した実用性の高い燃料だ。そのためLNGバンカリングを安全かつ効率的に行える体制を整えていく必要がある」と話した。今年に入り、シップ・ツー・シップによるLNGバンカリングも開始したことも紹介した。佐々木専務は、2050年までに温室効果ガス(GHG)排出量を08年比で50%削減する目標に対して、「既存船も含めての目標なので、新たな船にはさらに削減効果の高い性能が求められる」と指摘。その上で、「造船所の役割は(海運事業者から)求められる能力を発揮できる船を建造する必要があり、その中でもLNG燃料船は最も効果的なソリューションだ」と話した。橋本副社長は、シンガポールとロッテルダムに投入予定のLNG燃料供給船などを紹介。「LNG燃料はGHG排出量の削減につながり、経済的にも競争優位性が高い燃料になると考えている」と言及する一方で、課題として船舶やバンカリング体制の構築などに巨額な設備投資が必要なことを挙げ、「LNG燃料を主流にするためにはコストを下げていかなければならない。どのように克服していくかを考えていく必要がある」と問題提起した。ストラング上級副社長は、「LNG燃料は次世代の主要燃料だと考えている」と述べ、LNG燃料クルーズ船の整備を進めている方針を紹介した。
 会場からは、「新造船でのLNG燃料の採用が何故進まないのか」という質問が上がった。これに対し、サガール船長と佐々木専務は、建造コストと燃料供給体制の問題を挙げた。一方で、橋本副社長とストラング上級副社長は、「LNG燃料供給に関するインフラ体制は徐々に立ち上がっており、供給面については比較的楽観視している」見方を示し、「船主をいかに説得していくかが課題となる」(ストラング上級副社長)とした。橋本副社長は、「初期投資コストが高いため、導入を進めるためには助成金や税制優遇措置などが必要になる」と指摘した。